Keep My Word

旅とタンゴをこよなく愛する。カラダナオル創業者。

ブタペストの夜に思うブエノスアイレスのタンゴについて

ハンガリーの首都ブタペストに行くのは2回目だった。20年来のコロンビア人の親友マリアの結婚式に呼ばれて、2年前にウェールズに行った。

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結婚式が無事終わり、「さて、どうするか」と思った時にふとブタペストに行こうと思い立ち、ふらりと行ったのだった。そして、全くの偶然だったのが、タンゴフェスティバルが当地で開催されており、結局1週間ほど滞在した。

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ヨーロッパではタンゴフェスティバルやタンゴマラソンなどが常時開催されているが、参加するのは初めてだった。面白かったのは、それから半年後にブエノスアイレスに行ったのだが、その時踊った人が「あんた、夏にブタペストにいたでしょ?」と言われたことだ。タンゴコミュニティーは本当に狭い。

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今回は1泊しかできなかったが、それでも着いた日にミロンガに行ってみた。タンゴフェスティバルのイメージがあったので、ゴージャスな感じのミロンガを想像していたが、非常にこじんまりとしたミロンガだった。

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(2年前に行ったブタペストタンゴフェスティバルの会場の様子)

ハンガリー人は日本人に感性が似ていると言われるが、踊ってみて本当にそうだなと思った。とても真面目だが、なんだか身体的な距離がとても遠かった。お隣のルーマニア人がガンガン来るラテン気質なのに、ここまで違うのかというくらい違ったのが面白かった。

たまたま知り合ったタンゴDJをしているハンガリー人女性が、「今日は初心者ばかりだから」と言っていたので、ハンガリー人全員がそんな踊り方するとは思わないけど・・・それから結局ほとんどの人と踊り、最後にその彼女と数回踊ってホテルへと帰った。

ブエノスアイレスではヨーロッパからたくさんの観光客がタンゴを踊りに来るが、基本みんなとても上手いので、なんとなくヨーロッパの人たちは「みんなタンゴが上手」だと思っていた。でも、考えてみればタンゴのためにブエノスアイレスくんだりまで行くのはハードコアなやつばかりだから、上手いやつが多いに決まっている。

でも、逆に特に普段からレッスンもとってなく社交手段のひとつとして踊っている人たちと踊ると、その国の国民性や文化が感じ取れるから楽しい。

国も違えば人も違う。その国のスタンダードな踊り方がよその国では異端となる。自分が個人的にとても距離が遠いと感じたハンガリー人の人たちは、彼らのあいだではそれが心地よい身体的距離なのかもしれない。

アルゼンチン人の先生はよく「お互いに寄り添って踊ること」の重要性を説くが、たしかにそれはとてもタンゴ的な考えだし、自分もそっちほうが好きだ。でも、よその国に行って、そんなことを言えるわけでもなく、また言うつもりもない。

あらゆるスポーツや踊りには流行り廃りがあり、スタイルもどんどん変わっていく。ブエノスアイレスでも一時期タンゴ・ヌエボが流行ったが、いまでは踊っているやつなんてほとんどいない。だからと言って、完全になくなったわけでもなくまた流行るかもしれない。

なんでも本場至上主義みたいな考え方が多いけど、「楽しければいいじゃない」と個人的には思う。

楽しくあるためには、正しくある必要はない。

些細ないことだが、それはとても重要なことだ。

なんだかんだ言って僕もブエノスアイレスのほうが好きだが、それはきっとあそこのミロンガは「生身の男女」になる場所で、国籍、年齢、社会的地位、貧富など関係ない。踊りの上手いやつがヒエラルキーの上にいることは間違いないが、それだけではない。容姿や服装も当然カウントされる。(だからバカみたいに着飾った男女が多い)

そして、たまたま隣に座った男たちと「おい、おまえあの金髪と踊ったか?どうだった?」とか箸にも棒にかからない、どうでもいいくだらない会話をするのがとてもつもなく好きなのだ。

そんなことを思いながら、ブタペストの夜は更けていった。