Keep My Word

旅とタンゴをこよなく愛する。カラダナオル創業者。

2017年のブエノスアイレスの冬にて

アルゼンチンに初めて来たのは、2011年春だった。

かねてより、海外に住みたいと思いがあり、オンライン英会話スクールが軌道にのり、すべてリモートで仕事できるようになったので、東京のマンションを解約してブエノスアイレスまでやってきた。

正直、「アルゼンチンに住みたい!」なんて思ったことは一度もない。ただ、ブエノスアイレスという街の名前と日本の反対側にある国という事実に惹かれたから来ただけだ。当時は、スペイン語も全く話せなかったし、タンゴも知らなかった。

ブエノスアイレスが気に入らなければ、違う街に行く予定だったが、結局丸2年住むことになり、当時は円高だったこともあり、ブエノスアイレスにマンションも買った。

2013年から世界一周旅行にふらっと出かけて、その途中の地であるメキシコシティに着いたら、その街の魅力にやられて、うっかり二年も住んでしまった。

その間もブエノスアイレスには半年に1回は来て、都度2、3ヶ月ほど滞在している。

2015年にはまた日本に帰国したが、それでも1年に1回のペースでブエノスアイレスに滞在した。

だから6年以上のあいだ、ブエノスアイレスに行ったり来たりしている生活をしている。

blogos.com

blogos.com

アルゼンチンの経済はジェットコースター並の激しさで変動し、10年に一度は財政破綻をする国だ。

そんな国で全財産をはたいてマンションを購入するのもなかなかの侠気がいることではある。そのマンションも無事、今年売って、いくばくかの儲けも出た。感情的には売りたくはなかったが、正直、もういいかなと思ってはいた。

2011年からずっとこの国に注視していたが、経済は一向に上向かず、国としてのビジョンもない。これほど豊富な資源国なのに、人々は文句ばかりを言い、特に努力をして生活を向上しようという意欲も見られない。

この国に2年もいたから、メキシコシティに着いた時に、そのあまりの活気に一気にその街に恋に落ちてしまったのだろうと思う。鬱屈された街、それがブエノスアイレスだと思う。

でも、正直に告白すると、僕はこの街、この国、そしてこの国の人々が好きではある。なんだか悔しくはあるが、理性と感情は時々違う答えを出すように、100%感情的な理由でアルゼンチンという国に思い入れがある。

たぶん、これからなんども財政破綻をするだろうし、治安も悪くなり、政治もぱっとしないとは思う。まあ、仕方がない。

アルゼンチンの人たちは無駄の努力が嫌いだ。でも、努力なんて大概無駄に終わる。すべての努力が結果に繋がるのであれば、人生それほど楽なことはない。

これからもこの国に時々来て、アルゼンチン人のようにこの国にたいして非建設的な文句を言いながら、のらりくらりと過ごすのであろう。

僕のスペイン語は100%アルゼンチン訛りなので、フランス人がフランス語訛りの英語から逃れられないように、僕もアルゼンチン訛りのスペイン語からは逃れられない。

いつもこの街に来るたびに現地人と間違われるほど、アルゼンチン訛りをマスターしてしまったが、この国ではアドバンテージでもほかの中南米諸国では笑いの種だ・・・・

 

でも、アルゼンチン人ほど、この国に対して悲観的ではない。

結局、いつかはよくなるとは思う。もちろん、この10年近くのあいだ、その兆候はゼロだし、年々悪くなっていってはいるのだけど・・・・

 

これほどの資源国がこれほど貧しくなるのも、本当におかしなことだと思う。舗装はめちゃくちゃだし、街じゅう落書きだらけで、空き巣と窃盗が後を絶たない。

外見だけはちゃんとしているが、内実はひどいものだ。

特に今年は例年よりも30%から40%も観光客が少なくなり、レストランや店などがどんどんと潰れている。それでも外資はどんどん入ってくるが、資源を安く買い叩くばかりで国民にはお金が回ってこない。

There is a cynical joke in Argentina that goes something like this: God gave Argentina vast acres of fertile land where crops grow and cattle graze and horses roam, and He gave Argentina oil and minerals to fuel their potential. And when He had finished, God worried that perhaps he had put a bit too much goodness into this country…and so, he created the Argentine people.

(意訳すると、「神はアルゼンチンに豊穣なで資源豊かな土地を与えたが、少し与えすぎたかと心配になって、アルゼンチン人をお造り給われた。」という皮肉なジョークがアルゼンチンにある)

www.forbes.com

 

アルゼンチンの発展を阻害しているのは人的要因だし、彼らもそれを自覚していると思うが、それでもやはりこの国は変わることはない。

これから10年、20年と定点観測を続けて、気長にその発展を見守っていきたいと思っている。