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旅とタンゴをこよなく愛する。カラダナオル創業者。

今さら大傑作映画「6才のボクが、大人になるまで」を批評してみた

機内で見る映画というのは、微妙な立ち位置にある。 だいたいの場合、ビールやワインを飲みながら、また窮屈な体勢で見ることになるので、それほどシリアスな映画を見ることはない。

だから、多くの場合マーベリックヒーローもの、やれバットマンvsスーパーマン、アイアンマン、X-menシリーズに落ち着く場合が多い。最近はアイアンマンやキャプテンアメリカ、それにスパイダーマンまでが同じ映画に登場するので、正直なにがなんだか分からなくなってきているが、ストーリーなんてあってないものなので、別に気にならない。

でも、時々そんなものに見飽きて、違うテイストの映画を見ることがある。 そうして、見た映画が「6才のボクが、大人になるまで」だった。

あれは、日本からトルコ経由でアルゼンチンへと向かう機内のなかだったので、きっとインドあたりを飛行中に見た映画だったような気がする。この映画が12年の歳月をかけて一人の少年を撮った映画だということは知っていたし、「恋人までの距離」でいちやく「インディペンデント映画の帝王」に躍り出たリチャード・リンクレイターを知らない映画好きはいない。

スコットランド留学時代に、フランス人の女の子が「私が一番好きな映画は、恋人までの距離」と言っていたが、そのときこの子とは仲良くなれないと思ってしまった記憶がある。正直、それほど好きな映画でもなかったし、好きな監督でもなかった。

だから期待値はとても低かった。 それがビールを飲みながら気軽な感じで映画を見始めたが、どんどんと引き込まれて、映画が終わる頃には「もっとこの時間が続いて欲しい」とすら思った。

そして、映画のラストシーンでは、この映画を集約するようなセリフを主人公が言って、本当に美しくこの一大叙情詩が幕を閉じた。映画の上映時間が2時間46分と通常よりも多いとあとから知ったが、なんなら3時間でも4時間でもずっとこの少年の成長を見続けていたいとすら思った。

この10年、20年で見た映画のなかでもベストのひとつと言える。 「アメリカン・ビューティー」「オールド・ボーイ」「HANA-BI」「萌の朱雀」「幻の光」「太陽に灼かれて」と今でもすぐに思い出せる名作の数々に匹敵するくらいの感動を覚えた。

Boyhood, review: 'the achievement of a lifetime'

当然、海外でも絶賛されており、「リチャード・リンクレイターはこの映画を作るのに12年の歳月をかけたが、我々はこの映画をあと12年かけてじっくり楽しむだろう」と評されている。

同じ思春期の少年を扱った傑作映画「少年は残酷な弓を射る」があるが、それとは対照的にこの映画は静かな明るい余韻を残してくれる。

この映画は万人に薦められる傑作映画だと思い、なんとはなしにヤフーの映画レビューを見たが、くそコメントばかりで笑えた。

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世の中には絶対に友達になれない人たちがいるなと強く思った次第だ。