Keep My Word

19歳から旅を始めて、スコットランドで英語を学び、アルゼンチンでスペイン語とタンゴを学び、メキシコではサルサをかじり、オンライン英会話/スペイン語スクールを運営している男のブログです。海外滞在歴10年、50カ国ほどぶらぶらしました。

初夏のある夜

人との出会いは、不思議なものだ。

先週、8年前ほど知り合った友人の誕生日パーティーに行った。
彼が主演を努めた「ハブと拳骨」という映画の公開記念イベントも兼ねていたので、それは盛大なものだった。

もともとはモデルの女の子からの紹介だったのだが、彼女に紹介されたその日になぜか一緒に朝まで飲んだ。
そのときはまだ俳優ではなくメンズモデルとして活躍していた。
夜中の三時過ぎくらいになり、ほどよくどころかかなり酔っぱらった僕たちは、自分たちの仕事について色々と語り合った。

「男でモデルをしているというと、必ず頭悪いと思われるんですよ」と苦々しい表情で彼はぼつりと言った。誇りを持って仕事をすれば、どんな仕事でも素晴らしいなんてことは机上の空論で、現実は先入観で頭が固くなった人たちと、効率ばかり優先させてクオリティに気を配らない人たちが多勢を占める。

ただ根気よく続ければ、自分と価値観を同じ人が見つかり、満足ができる環境で心置きなく、自分の 能力を発揮できる仕事ができるようになる。彼はきっとそういう環境を築き上げつつあるのだろう。

今日、ロンドンでヘアスタイリストをしているゴウくんとたまたまスカイプで話した。彼も一昔前は、ガスも電気も通らない工場のようなところで友人たちとフラットシェアして、飲み代にも困るような毎日だったのが、今ではマリークレールやヴォーグなどの一流雑誌の仕事をしている。

ふと、彼と一緒にロンドンに残っていれば、自分の人生はどのような展開を見せたのだろうかと考えることがある。ファッション写真に大して興味がないので、きっと金にならないドキュメンタリー写真をひたすら撮り続けて困窮した生活が長く続いたことは確かだ。フィルム代と現像代がやたらと高いロンドンだったので、写真すら撮り続けていられたか疑問だ。

そう考えると、悪くはないのかもしれない。

不思議な縁で今いる環境にいるが、心の底では人生に感謝している。
そして、そこから振り落とされないように次のステップを模索している。

あの頃、まだ学生だった彼が宮崎あおいと共演するようになるとは、夢にも思わなかった。 そうして、着実に周りの人間はステップアップしている。それはとても喜ばしいことだ。

誕生日パーティーをあとにした僕は、地下鉄の終電に間に合わせるため12時過ぎに渋谷駅へと向かった。 終電は12時過ぎまであると思っていたが、いつの間にか時刻表が変わっており、乗り遅れてしまった。 仕方なくJRで行けるところまで行くことにした。

駅に着くと、ビールを買って家まで歩いて帰った。40分ほどかかったが、歩くには気持ちのいい夜だった。
子供の頃の時間は、一瞬一瞬ちゃんと切り取られ、それが過ぎ去ることを体感することができたが、今では昨日食べたランチすらよく思い出せないほど、時間が連なっている。

一瞬ごとの区切りが、いつのまにか一分ごとになり、そして一時間となり、やがて一日一年と区切りが長くなっていく。ちゃんと注意していないと時刻表が変わったことにすら気づかず、終電を逃すことになる。

今までそうやって多くのことを見逃してきたのかもしれない。

ただ、それでもやはり時間は過ぎ去り、モデルから映画の主演俳優になったり、ゴウくんのように一介の大阪の美容師からイビサ島のヨットでグラビアアイドルと仲良く一緒に写真に収まるほど出世したりする。
(トップレスの金髪美女に囲まれている写真を送ってくれたが、ブログに載せるなと言われたので、残念ながら お見せできません)

時間を連なったものとして漠然と消費せず、一瞬一瞬濃密に生きていく人間がなんらかの形で自分自身という存在をこの世界に残していくのかもしれない。この世の形あるものは、すべてそういった大切な一瞬から形作られ、当人のみしかその一瞬の大切さは認識できないかもしれないが、作品という形で共有されたり、その人たちに直接触れ合うことによって伝わっていくのだろう。

寝苦しい初夏の夜に、少しはこうして自分自身を見つめ直す時間を持つことからまずは始めてみようかと思う。