Keep My Word

旅とタンゴをこよなく愛する。カラダナオル創業者。

朝早く、鮭定食を食べながら・・・・

今日、なぜか朝起きたら無性に鮭定食が食べたくなり、近所の定食屋に行った。念願の鮭定食にありつき、満足感にうち震えながら、まわりのテーブルを見渡した。

ふと、作業服を来た中年男性と若い男の二人組が目に付いた。きっとあまりに年齢が離れた二人組だから、目に付いたのかもしれない。
一人は50歳ぐらい、もう一人は二十歳そこそこに見えた。

中年男性のほうが一方的に話をし、若い男はひたすら話を聞くという構図だった。日常にごくありふれた光景だ。だが、その中年男性の話は余りにつまらなく、わざわざ朝っぱらから話すような内容ではなかった。傍で聞いていても、ひどく退屈な話で、心底その若い男に同情した。

こんな朝早くに、しかも貴重な休み時間を潰してまで、延々と続くその中年男の他愛もない話を聞かされる彼のことを本当に気の毒に思った。

そして、自分の立場を顧みた。心配事はたくさんあるが、少なくても朝早くに鮭定食を食べながら、取るに足りないくだらない話を聞かされる立場にはない。「悪くはない」と思った。もちろん、万全でもなく、完璧でもない人生だが、朝早くから鮭定食を食べながら、頭が痛くなるようなしょうもない話を聞かされることはない。ちっぽけなことだが、まわりに左右されない空間を持つということは、密度の濃い日本の社会ではなかなか骨がいる作業だ。

醤油と間違えて、ソースをかけてしまいせっかくの鮭を台無しにしてしまったが、それでも悪くはない朝だった。胸震えるような幸福感とやらは感じることはなかったが、お茶をすすりながら今日のことをぼんやり考え、楽しみな気分を味わうことはできた。

ご飯をおかわりし、卵ごはんを食べ終えて、やおら立ち上がって自分のテーブルをあとにした。そして男性二人組のテーブルに差し掛かり、テーブル下の若い男の手元に目をやった。

彼はテーブルの下に携帯を隠して、器用に片手でメールを打っていた。相変わらず中年男はくだらない話を話し続け、若い男は適度に相槌を打ちながら、と同時にメールを打っている。

「なるほどな」と思った。
なぜかちょっとだけ嬉しくなった。退屈に対抗するには携帯はいいツールだ。多くの一般家庭では日常的な光景なのかもしれない。これからは携帯に勝つようなトークしか聞いてもらえない・・・・などと言うつもりはない。

ただ単純につまらない話を聞く必要がなくなった世の中になったことが嬉しかったのだろう。指が太くて、携帯を片手で操れない僕は彼のことをほんの少し羨ましく思ったのも事実だ。たまには鮭定食を食べに、朝早く起きてみるのも悪くはないものだ。