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旅とタンゴをこよなく愛する。カラダナオル創業者。

現代版ゴッホのお話し。

友人から誘われて、国立新美術館の「オルセー美術館展」に行ってきた。パリのオルセー美術館には10年以上前に行ったことがあるが、あまりに巨大過ぎてすべてを見切れなかったので、今回はいい機会だと思った。

それにしてもやはりゴッホという画家は別格だ。彼の絵からは、ほとばしるエネルギーが感じられ、「星降る夜」に到っては本当に夜が目の前に現れたかと思うほど、リアルな存在感がある。

Starysky

ふと、彼のような途方もないエネルギーの持ち主が現代に生まれていたら、どのような職業に就くか、夢想してみた。やり尽くした感のある画家という職業には就かないのではないか。このオルセー美術館展に行くとよく分かるが、19世紀末の絵画の世界は激動の世界で、どんどんとスタイルは変わり、発展していった。当時の革新的な考えを持った人たちの多くは、画家か作家だった時代だ。

この現代で芸術家として成功を収めようとすると、村上隆のような形態になってしまう。ビジネスという観点からすると、素晴らしい成功を収めているが、100年後彼の作品を見て人々はどう思うのだろうか?ただ何とも思わないような気がする。少なくてもゴッホの作品から感じるようなエネルギーの発現などは感じないだろう。ゴッホの作品はほとんど3Dと見紛うほど、圧倒的な存在感がある。

今、同じような熱量を持った人物として頭に浮かぶのは、スティーブ・ジョブズだ。彼が創りだした作品の数々、「iPhoneMaciPadiPod」などは100年経ってもその目指した革新性は色褪せないかもしれない。100年後の人たちは口々に「よくこんな時代にこれだけのものを作ったな。ほかの製品見てみろよ、どれも醜く使いづらい。だけど、彼が作った製品だけは違う、どれも美的センスに優れ、思わず触りたくなるくらいだ」と語り合うのかもしれない。

ジョブズは高度に発達した現代版ゴッホなのかもしれない。稀有なエネルギー量と、周囲を巻き込む圧倒的な社会性を身につけ、我々が見たこともない世界を見せてくれる。映画が第7芸術として認められているが、それ以降確定している芸術の分野はない。もしかしたら、近い将来「起業」がそのあとの芸術の分野として認められる日が来るのかもしれない。