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旅とタンゴをこよなく愛する。カラダナオル創業者。

「楽をして稼ぐ」ということ:先生という職業について

本当に世の中そんなことばかり考えている人が多い。

そして、うちにも大勢そのようなモチベーションで先生として働きたいと面接を受けに来る。

もちろん、その大半は書類選考と一次選考で落とす。

(だいたい職歴がスーパーマーケットやレストランのウェイトレスしかしたことがないのに、突然先生になりたいと言っても無理がある。せめてTESOLを取るなど努力の切れ端でも見せて欲しい)

しかし、そのようななかでも飛び抜けて優秀な人もいる。このようなケースは非常に稀なのだが、先日そのような人を面接して、採用した。

なぜか?

だって、飛び抜けて頭がいいんだもん。

こっちの質問の意図をきっちり理解し、尚且つ先回りして答えることが出来る。これはなかなか出来そうで出来ない。経歴はずっと中国銀行に勤務し、そのあと韓国系オンライン英会話スクールに3年近く勤務していた。そして、この韓国系オンライン英会話スクールという経歴が彼女の「楽をして稼ぐ」マインドに火をつけたらしい。

多くの韓国系オンライン英会話スクールは先生たちを朝3時とか4時から会社に拘束し、みっちり8時間働かせる。しかも、10分レッスン、15分レッスンなんてざらなので、かなりの人数を捌かないとやっていけない。こんな非人間的かつあほなシステムでよくやると思うが、韓国の英語教育は日本の英語教育に比べて遥かに成功しているので一概に批判は出来ない。

だが、このようなシステムのもとで働くと、「ただ英語を話せる人」でも十分に勤務出来るので、「オンライン英会話スクールで働く=ただ英語を話せればいい」という思考回路になる。結果、「座って話せばお金をもらえる楽な仕事」という低い職業意識の人たちを大量生産することになる。

しかし、そのような人たちも朝起きるのは辛いし、それに賃金は恐ろしく低いので、もっと楽をして稼ぎがいいところに移ろうと努力はする。そして、うちのような数倍支払うところを見つけると、意気揚々と応募してくるのだ。「同じことをして、数倍の給料がもらえる!なんて素晴らしい世の中なんだ!」なんて思ってくるのだろうが、そんなことはあり得ない。

仮に書類選考、英語力テスト、一次選考、そして嫌な質問ばかりする日本人男性による最終面接を通過しても、研修期間が待っている。これが彼らにとってはクセモノだ。「だって、楽をしたいんだもん」と入った割には、諸々とやることが多すぎる。

各生徒様にあったレッスン内容を考え、授業中には生徒様の間違いを訂正するためにチャットボックス書き込み、レッスン後には一人一人にかなりの長さのアドバイスを書き込まないといけない。そのような事態を目の当たりに次に彼らが考えることは「これ、ちょっと面倒くさくない?給料もっと落ちてもいいから、もうちょっと楽なところを探そう」という考え方に切り替わる。

ものすごく合理的な人たちなのだ。

結果、彼らは自ら去っていく。こちらもあえて引き止めはしない。このような考え方をしている人たちの考え方を根本的に変えることは出来ないだろうし、仮に出来るとしても恐ろしく時間がかかり、リスクも大きい。

このような経験をしてみて思う採用すべき先生の理想像は、MARIE先生やSHAWIE先生のようなオンライン英会話スクール勤務経験ゼロで、なおかつお金目的でなく、また頭がいい人たちなのかもしれない。だからと言って、そんな人たちがそうそういないもの事実なのだが。

だいたい「楽をして稼ぐ」という考え方は先生という職業に当てはまらない。先生であることの醍醐味は「常日頃からいかに生徒の能力を伸ばすかを考え、彼らのニーズを的確に把握し、計画立ててその能力を少しずつ伸ばしていくこと」にある。生徒の成果が先生の財産なのだ、そしてそれはけっしてお金で計ることはできない。

個人的には先生なんて職業はどんなに大金を積まれても、なりたくない。特に外国人に外国語を教えるなんてものすごくストレスがかかる。「アーとかウーとかしか言えない人たち」に笑顔で根気強く教えることが出来るほど人間出来ていない。

想像しただけでも身の毛もよだつ所業だ。

だからこそ、そのようなことを日々営んでいるワンズワードの先生たちに尊敬の念を抱くし、彼らのその行為に少しでも報いようと思う。