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旅とタンゴをこよなく愛する。カラダナオル創業者。

【書評】拝金:ホリエモンの闇

今更ながら、ホリエモンの書いた小説を読んだ。

フジテレビの買収劇が表沙汰になったときに、テレビでとあるテレビ局の男性アナウンサーと討論していたホリエモンの姿を思い出した。彼はあくまで忍耐強く論理的に理論を展開しているのに、男性アナウンサーはひたすら女子アナとの合コンの話を持ち出して揚げ足を取ろうとしていた。

資産価値5000億円のオーナー経営者と一介の男性アナウンサーだと役者が違うなと思って見ていた。

なんでこんな頭のいい人が世間では悪者にされているのだろうかと訝しくも思った。そのあと逮捕されたときも大企業で経理を勤める友人が「あの程度のこと、どの企業もやっている」と言っていたので、そうだろうなと思った。当時のことはうろ覚えでしか覚えていないが、ライブドア事件を詳細に取材したAERAに特捜部の幹部のインタビューが掲載されており、「テレビで見た横柄な発言を聞いて、絶対に逮捕してやると思った」というその幹部の発言を読んで、日本という国は本当に出る杭は打たれるのだなと寒気を覚えた。

今年、久しぶりにネット中継でホリエモンを見て、相変わらず「どうしてこんな簡単なことも分からないの?」という態度でナチュラルにほかの出演者を小馬鹿にしている姿を見て、独房に入ってもこの人は変わらなかったのだなと思った。

そして、世の中には彼が思った以上に馬鹿な人たちが多かったというこの本の主張も、数々の特捜部の失態や民主党の一向に見えてこない政策、それよりも何よりも全く機能していない日本のジャーナリズムを見ていると、その通りなのかもしれないと思ってしまう。

差し押さえされたときも彼の家には33万円の個人資産しかなく、本当にお金には興味がないのだと思った。彼が心底欲しかったものは「生きている実感」だったのではないだろうか。マネーゲームは彼にとってそれを手に入れる手段でしかなく、お金自体よりも数字としてお金・・・・・どんどんと面白いように増えていく数字としてのお金に充足感を覚えたのかもしれない。

昔も今もその挙動からは主義主張なんてものは感じないが、もし彼がフジテレビの買収に成功し、彼が唯一信仰している「効率」という名のもとにテレビ局を粛清したら政治にも強大な影響力を及ぼせるようになっていただろう。

そのほうがライブドア事件のせいで起業熱も下火になり、企業買収もほとんど行われないようになった今現在よりもよほど面白い世の中だったのではないかと思う。