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旅とタンゴをこよなく愛する。カラダナオル創業者。

目に見えない何かを追い求めて:マニラの空港にて

昨日からマニラに来ている。

そして、今から香港へと向かう。マニラには19日に戻ってきて、先生たちと会う予定だ。

マニラに来るのは一年ぶり以上だが、思った以上に経済が発達してきているなと思った。たぶん、比べる対象がブエノスアイレスだからかもしれないが、「成長著しい国」という印象を受ける。アルゼンチンにいたっては、どこかワビサビが効いた衰退国という印象を未だ拭えないが、フィリピンの場合は国民一体となって「経済的な豊かさ」というものを追い求めることを感じる。

日本の高度成長期もそのような高揚感があったのだろう。

逆にだからこそ、個人的にはフィリピンよりはアルゼンチンのほうが住むには魅力的に感じる。「経済的な豊かさ」を通り越して、「人間、金だけじゃねえな」的な開き直りがアルゼンチンにはあるからだろう。

アルゼンチン人はよく「ペソはお金じゃない」といって、自国の貨幣すら信じておらず、お金が貯まったら家や車などの「モノ」に替えてしまう。

いわば貨幣経済を真っ向から否定していると言っても過言ではない。

豊かの同義語が「経済的な豊かさ」であるうちは人生はシンプルだが、それを通り越してしまうと、とたんに人生はより複雑になる。

今度は個人個人が、「自分なりの豊かさ」を追求するはめになり、その選択肢は千差万別だ。だが、日本のようにいまだ旧来の「いい大学、いい会社」「終身雇用制」などの価値観を引きずっていると、窮屈になって自殺する人たちが後を絶たないのだろう。

アルゼンチン人などは「人生、がんばっても仕方ないから、なるべく楽しもう!」と体のいい諦念があり、それが彼らをより魅力的にさせている。

一昨年に自分が住む国を決めるために当然、その候補のひとつとしてフィリピンを考えたが、断念した。ブエノスアイレスのどこか陰のある味わい深い文化的なものに魅力を感じる自分として、「ビーチ、リゾート、太陽」のフィリピンはあまり心に響かなかった。

自分は常に「目に見えるもの」ではなく、目に見えない、表現しづらいものに魅力を感じる。お金、ビーチ、経済・・・・そのようなものよりはもっと大切な何かを追い求めていきたい。

ただこうして久しぶりにアジアの国に来てみると、自分が生活している南米諸国との違いに愕然とする。その大きな価値観の違いに気づけただけでも、ブエノスアイレスで生活をして良かったなと思う。

多民族国家で世界でも稀にみるコスモポリタンであるブエノスアイレスの魅力を、アジアに来て改めて感じている。当分はブエノスアイレスで生きていこうかな・・・・・このような選択肢を持っているだけでもとても幸運であるとひしひしと感じている。

マニラの空港にて