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19歳から旅を始めて、スコットランドで英語を学び、アルゼンチンでスペイン語とタンゴを学び、メキシコではサルサをかじり、オンライン英会話/スペイン語スクールを運営している男のブログです。海外滞在歴10年、50カ国ほどぶらぶらしました。

【書評】鈴木先生を読め!:より良い人間になるために

今まで文学を越える漫画に出会ったと思えたのは、「天才柳沢教授の生活」だけだ。

しかし、またとんでもない漫画に出会ってしまった、それが「鈴木先生」である。

現代の若者はドストエフスキートルストイなど読むことはないだろうが、むしろ代わりに「鈴木先生」を読んでおけば、そのエッセンスを十分に知ることが出来る。(特にドストエフスキーの傑作である「罪と罰」を彷彿させる論理展開がこの一大漫画オペラにはある)

全11巻で完結している作品だが、どのエピソードも胸に突き刺さり、とても考えさせれる。思考停止に陥りがち現代人は鈴木先生に見られる「決断や判断を留保し、より深く人や物事について考察する」という首尾一貫した態度を学ぶ必要がある。(311のあと起こった反原発ヒステリーやそれに続いた自粛ムードを思い出すと、人がいかに感情の赴くままに安易に判断をしているかが分かる)

天才柳沢教授の生活」は経済は論理で動いているわけではなく、ひとの感情によって変化し、先入観を持つ危険さと愚かさを教えてくれるが、「鈴木先生」はもっと具体的に物事をより正しく判断できる思考方法を持つにはどうすればいいか教えてくれる。

世の中には「他者への想像力」が圧倒的に欠落している人たちがいる。彼らは自分たち自身を「他者」の前提として置き、すべての価値基準を自分自身の価値基準に歪めて判断する。

この広い世の中には自分たちが到底及びもしない考えを持った人間がいたり、深慮遠謀のもとに動いている人たちがいることが想像出来ない。せめてそのような人たちの考えを認める容量の広さがあればいいのだが、自分たちと相容れない意見や考えを徹底的に糾弾し、非難する。

鈴木先生も柳沢教授も常に「なぜか?」と問い続け、一見理不尽に見える物事でも、感情的な判断を先送りし、最後まで問いかけることを辞めない。

それにしても中学校の先生とは業の深い職業だ。子どもと大人の中間に位置する彼らを指導するのは、神業に近い。そんな神業を鈴木先生は毎日こなし、その彼らと共に少しづつ成長していく。

「普通の人間同士で、不幸が起こる」と鈴木先生は語るが、たしかにみんながみんな少しづつでも相手の立場を理解する態度を示し合えば、「ちょっとは立派な大人」となり、世界の争い事も減っていくだろう。

鈴木先生 【全11巻】完結

(こちらで1巻が無料で読めますのでお試しください:2013年1月21日まで)