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旅とタンゴをこよなく愛する。カラダナオル創業者。

新しい地平を手に入れるということ:メキシコシティにて

今、メキシコシティにいる。
ブエノスアイレス発の世界一周航空券を買った時に、なぜこの地を選んだのかあまり覚えていない。

べつにどこでもよかった。
ただ行ったことがない土地に行きたかったから、選んだけだと思う。

だから、何も期待していなかった。メキシコに行くというと、周りの人からやたらと心配され、生きて帰ってこれるのか心配されたが、メキシコシティはとても穏やかな街だ。2年も住んだブエノスアイレスよりもよほど安全だ。もうこの街に着いてから10日ぐらい過ぎたが、まだまだ飽き足りない。あと数ヶ月はいようかと考えている。

予定では9月初めにはブエノスアイレスに帰る予定だったが、その予定を大幅に変更して、この地に滞在することにした。理由はいくつもあるが、その理由はどれも上っつらのもので、本当はこの街に恋に落ちただけだろう。

スコットランドの首都エディンバラに住んだ時もそうだったし、ブエノスアイレスに住んだ時もそうだった。人がその土地に住むことを決めるのに深い理由なんて必要ない。ただ落ちる、その土地に落ちて、根を下ろして、生活にまみれて、やがてその恋も破れる。

そしたら、また別の新しい土地に移ればいい。
これからはそうやって生活していきたい。

旅をすること自体にはもう興味がないのかもしれない。違う国に住んで、生活にまみれて、ややこしい自体にも陥り、それでもなんとかそれらをクリアして、そしてまた生活をする。そんなことが好きだ。そのためにはそこには2、3年住む必要はある。

外国人でいることはとても居心地がいいのも事実だ。多少、変なことやおかしな考え方、それに失言しても、「外国人だから」という理由で大目に見てもらえる。特にいまは自分にとって第三言語であるスペイン語で生活しているからなおさらだ。

メキシコ人には「メキシコシティにはどれくらい滞在するのか?」と訊かれるが、気分次第で色々と返答を変えている。「最低でも、2、3年かな」というときもあれば、「一度、ブエノスアイレスに10月くらいに帰って、また来る」というときもあるし、シンプルに「2、3ヶ月」と言う時もある。どれも嘘ではない。いまだどれくらい、どのような形でこの街に住むのか決めかねている。

いまはこの地に落ち、深く潜り、なるべく人と関わり、彼らの考えや意見を聞き、時間を共有し、楽しい時間を過ごしたい。そして、そこからなにかを生み出していこう。

恋は所詮は恋で一過性のものだ。でも、それが本当の愛に変わるときもある。そうなれば、それはそれで素敵なことだし、そうならなくても、別にそれはそれで仕方がない。

ただひとつの矜持として思っているのは、その土地になるべく染まることだ。たとえ、その国が違う言語を話しても、その言語を習得する努力はするし、生活習慣が自分と相容れないものでも、それを取り入れようとする。そうして、また新しい地平を手に入れることが出来る。

ブエノスアイレスに2年住んだお陰で、タンゴとスペイン語を身につけることができた。いま、それがなかったら、自分の人生はとても味気ないものになっていただろう。

今から2年後、違う土地に住むことになっても同じことが言えるように、また新しい地平を手に入れて、自分の人生、それに周りの人生に光を灯していきたい。