Keep My Word

旅とタンゴをこよなく愛する。カラダナオル創業者。

Travel, Time, Morocco

子供の頃から、旅することを夢見ていた。 成長し、旅が出来るようになる年齢になると、旅することに夢中になった。

だが、その熱中も長くは続かない。 その転機となったのはインドへの旅だと思う。 インドに三ヶ月居て思ったのは、これほどまでの興奮と刺激を再び旅することで得ることは難しいということだ。

それでぴたりと旅することを止めてしまった。 もちろん、仕事などで他の国へ行ったり、ヨーロッパに住む友人たちに会いに行ったりはした。 でも、それらは厳密の意味で旅とはいえない。

旅を定義することは難しい。

ただひとつ言えることは、旅は物事を早く経験するためにはとても有効な方法だということだ。 若い頃の自分は、待つことなどできなかった。 とにかく早く、誰よりも早く生きたかった。

そうして、インドを旅して10年経った。 僕はモロッコへと旅立った。

もう興奮や刺激などは求めていない。 日常生活でもそれらを手に入れる術を身に着けられるように努力もしてきた。 20代の頃のように、やみくもに誰とでも友達になろうとしなくなった代わりに、信頼できる友達の数は増えた。 そして、いくばくのストレスを抱え、責任も増え、漠然とした将来の不安も抱えている。 ようはあらゆる意味で年を取ったということだ。

旅へのアプローチの仕方も変わり、興奮や刺激を求める代わりに、違う何かを求めている。

今回は初めて、写真を撮りに旅をした。 純粋に知らない土地に行って、自分自身だけが見たり聞いたりするだけでは満足できなかった。 自分が見て聞いて、感じたものを人に伝えたかった。

自分自身をそとに向けるのに、10年もの月日を要した。 長くはなかったかもしれないが、短くもない。

人に何かを伝えるほど豊かな人間ではないかもしれない。 しかし、それを補って余りあるほどに、世界には美が転がっている。 それを拾って、丹念に磨き、少しでも伝わりやすい形に還元できればと思う。