Keep My Word

旅とタンゴをこよなく愛する。カラダナオル創業者。

北の大地

距離が心地よい。
過去が美しく思えるのは、現在と距離があるからなのだろう。

新幹線に乗って、函館まで行ってみた。
東京からの遠さに安心する。
空気の濃度すらも、人口密度に比例して、いくぶん薄い気がする。
そこで生活できるとは思わないが、大きな土地に小さな人間が住んでいることを実感できる。東京にいると、人間があまりに野放図にのさばり、我が物顔に生きているので、生かされている実感など湧かない。

誰もが自分の足でしっかり立って生きているのだと思っているが、同じ日本のなかでも北端に行くと、東京と同じというわけにはいかない。常識なんて、所詮は人々の頭の中でしか存在していない。違う土地に行けば、違う価値観があり、違う常識がある。そんな当たり前のことを北の大地で思い知る。

ふとこのまま住み着いたらどうなるかと、頭のなかであれこれシミュレーションをしてみる。あまり現実的ではないかもしれないが、きっとなんとかうまくやっていける気もする。

チェスの駒のように、自分の人生を扱って、ことを進めていきたい。
同じところへ居過ぎると、執着が生まれる。
愛着ならまだいいが、執着だと厄介だ。
物事と人への執着は、成長を阻害する。

だから、なんとはなしに遠くへ行ってみたくなるのかもしれない。
今の自分を切り取るために。
切り取られた自分が、いかに見知らぬ土地で順応していくか興味がある。
新しさを求める旅には飽きたのかもしれない。

極論すれば、新しいものなど世界にはもう存在しないのかもしれない。
語られた人生とすでに描かれたイメージを再度、自分なりに焼き直す作業に没頭するしかないのだろうか?

新しさと深さは比例している。
深く掘れば掘るほど、新しいものが見つかるはずだ。

まだまだ掘り足りない。
もっと深く掘り、誰も見たことがないようないイメージを描ければと思っている。