Keep My Word

旅とタンゴをこよなく愛する。カラダナオル創業者。

サンドラ

やはり時差ボケなのか朝4時半には目が覚めてしまった。これから向かう国際空港から旧国際空港までどれくらい時間がかかるが分からないが、時間的余裕は十分あるだろう。ホテルから地下鉄の駅まで歩いてすぐだったので、地下鉄を乗り継いでバス乗り場に向かうことにする。

地下鉄は5時始発だが、なぜか車内は満席に近かった。彼らは一体これからどこへ向かうのだろうか?全員クラブ帰りにも見えないし、かといって仕事に向かう人たちにも見えない。不思議な集団だった。

グアルーリョス国際空港に問題なく着き、チェックインカウンターに向かう。そこには長蛇の列が並んでいたので、チェックインカウンターで出発地の変更をすることを諦める。ここから旧サンパウロ国際空港に向かうバスを探してみたが、所用時間は2時間半もかかるという。今はすでに6時半を回っているので、飛行機に間に合うかどうか非常に微妙だ。ポルトガル語でバスの運転手と周りの人々が論議していたが、間に合わないという結論に達して、首を横に振って残念だという顔をこちらに向けた。

あとは航空会社のコールセンターに電話して、電話で出発地の変更を試みるしかないが、こんな早い時間からコールセンターは営業しているのだろうか。とりあえず電話したが、あっさり英語のできるオペレーターに繋がり、簡単に変更ができた。こんな簡単なことだったら、昨日のうちにやっておけばよかったと後悔した。やはり今日できることは明日に延ばしてはいけない。

追加料金5000円ほど取られてしまったが、無事サンパウロを発つことができた。

Brazil, rio

リオはサンパウロと打って変わって、すごくいい天気だった。これこそがブラジルの夏だと思った。ブラジルまで来てリオまで足を運ばない人間はいないと思うが、本当に来た甲斐があったというものだ。

空港からリオ市内に向かうバスはやたらと寄り道をして、イパネマに着くまでに一時間近くかかってしまったが、眼前に広がる広大なビーチを見ればそんなささいなことは気にもならない。

ただ次に新たな問題が生じた。観光シーズンだけあってホテルが高い。サンパウロでは60レアル(4000円ぐらい)のホテルに泊まっていたが、ここではその値段ではドミトリーに泊まるしかない。イパネマから歩きながらホテルを探していると、いつのまにかコッパカバナまで歩いてしまい、そこでようやく良さそうなホテルを見つけた。最初は170レアルと吹っかけられたが交渉して、140レアル(1万円くらい)までに下げさせた。それでもサンパウロのホテルの倍以上だ。設備も部屋の内装もそのサンパウロのホテルより劣っているのがたまにキズだが、背に腹は変えられない。

Brazil, rio

荷物を置いて、ビーチに出てみる。これがあの有名なビーチかと思い、うれしくなって写真を何枚も撮る。イパネマまで歩き、ブラジルの陽光を満喫する。まだお昼過ぎだったので時間は十分にある。砂浜でひとしきり撮影したら、汗でびっしょりになってしまった。ホテルまですぐだったので、ホテルに戻ろうと横断歩道を渡っていると一台の車が猛スピードでこちらに向かって来て、急停車した。

何事かと思っていると、車の窓を開けてブラジル人の女性が顔を出し、ポルトガル語で話しかけてきた。ポルトガル語は分からないとジェスチャーで伝えると英語で話しかけてきて「バーラて知ってる?」と聞いてきた。もちろん知るはずがないので、知らないと答えると「今からバーラっていうビーチに行くんだけど、イパネマよりも断然きれいだから良かったら一緒に行かない?」と誘われた。

とくに断る理由が見当たらないので「オーケー」と答えて車に乗り込んだ。彼女の名前はサンドラといいポルトゲーザの空港でレンタカーの受付をしているという。今はバカンスで、リオに2ヶ月ほど滞在予定とのことだ。11歳になる娘がいて、娘はポルトゲーザでお留守番らしい。日本では考えられない話だが、ブラジルではそれが当たり前なのだろうか。

途中、ハングライダーの発着地に降りて見学し、バーラに着いた。しかし、一向に車を止める気配がない。どこに向かっているのかたずねると、「グルマリよ」と言われた。たしかにさっきからその名前を言っていたような気がするが、「ブルーマリン」と聞こえ、地名だと認識できていなかった。

イパネマを発ってから1時間ぐらい車を走らせて、ようやくグルマリに到着した。車の中ではサンドラから度重なるボディタッチ攻撃を受けたが、それもなんとかかわして無事にたどり着いた。この人はお金よりも体目当ての人なのだろうかと思ったが、あんまり深く考えないようにした。

グルマリにはなんの期待もしていなかったが、これがじつに素晴らしいところだった。イパネマやコッパカバナのように観光地化しておらず、人もそれほど多くない。大きな木に覆われた岩壁にはレストランがあり、そこで涼むながらビーチを眺めることができる。サンドラではなく、違う人と一緒だったらと思ったが、口に出しては言わなかった。

Brazil, gurumari

カメラを持って撮影しているのは自分ひとりなので、やたらと注目を集めたがそれも好意的な視線だったので、それほど気にならなかった。これほど開放的なビーチは珍しい。隣にはヌーディストビーチがあり、サンドラは何が狙いかしきりにそっち行こうと誘ってきたが、断った。ヌーディストビーチはゲイの男ばかりで、そんな人たちの裸を見ても、楽しくもなんともない。

Brazil

グルマリのビーチにいたのは一時間ぐらいだったが、それで十分満喫できた。あとはサンドラが無事に送ってくれるかどうか心配だったが、自分さえ気をつけていれば大丈夫だろう。

それにしてもブラジル人は自由だ。子持ちの母親でも平気でナンパし、ビーチに来てしまう。僕はそんなブラジル人に対して好感を抱きはじめていた。

サンドラは僕がピックアップしたところまで送ってくれて、そこで別れた。変わった人だったが、とくに何の問題も起きず、それどころか思いがけず素晴らしいビーチに連れて行ってもらい、感謝したいぐらいだ。

ホテルに帰ると移動の疲れがどっと出て、すぐに寝てしまった。明日の予定は何も立てていないが、なるようになるだろう。その日はぐっすり眠り、リオの太陽をたくさん浴びた体に十分な休息を与えた。