Keep My Word

旅とタンゴをこよなく愛する。カラダナオル創業者。

終わりよければ、すべてよし

致命的なことはえてして、些細なことから始まる。

日本へ帰る飛行機は、夜10時発だった。 かなりの余裕を持って空港へと赴いたが、サンパウロは深夜発のフライトが多く、すでにセキュリティチェックのための長蛇の列が並んでいた。

仕方がなく並んだが、遅々として前へ進まない。 セキュリティチェックを済まして出国審査のための列に並ぶころには出発時間がかなり迫っていた。このとき、周囲の人間に出発時間が間近なことであることを告げて、列を追い越せば良かったのだが、なんとかなるだろうという安易な楽観主義が頭をもたげて何の行動を取らなかったことが元凶だ。

出発10分前になると、コンチネンタル航空の係員がまだ搭乗していない乗客を呼びに来た。さすがに焦り前に並んでいた二、三人の人を追い越し、空いている出国審査のブースに走った。しかし、あろうことかごつい黒人の出国審査官は目の前に立っている僕にまるで気づく様子もなく、一心不乱に携帯でメールをしている。一刻の予断も許さない状況になっていたので、窓口の窓をとんとんと叩いて、注意を促した。そしたら、なぜかその出国審査官は激怒し、ポルトガル語で大声で罵り始めた。

本当に困った。 普段ならここで思い切り言い返して相手をやり込めようとするが、状況が状況なだけにとにかく謝り、早くしてくれと言った。 (もちろん、英語を解さない彼に何を言っても無駄なのだが・・・・・)

そもそも仕事もせずに携帯でメールをしている彼が悪いのに、どうしてこういう羽目に陥ってしまったのだろう。コンチネンタル航空の係員は状況を英語で説明してくれて、「君は彼に無礼なことをしたので、事務室へ来いと言っている」とのことだった。「残念なことに君が乗るはずだった飛行機のゲートは閉じられたよ」とも付け加えた。

最悪な事態だった。 とにかくその無駄に筋肉をつけた黒人の出国審査官のあとに従い事務室へと付いていった。コンチネンタル航空の係員も一緒に来てくれた。

そこで応対した人間はもっと性質が悪く「おまえはブラジルに来たのは初めてか?」と聞かれたので「そうだ」と答えると「もう二度とブラジルに来れないようにしてやる!今度来たら、おまえは相当なトラブルになるぞ!」と脅された。 一体この人たちは何がしたいのだろう? ブラジルで二回も強盗に襲われカメラは盗まれ、屈強な黒人三人相手に殴り蹴られて、頭にでっかいタンコブを作っても、ブラジルに対する愛情を失わずにいた。

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そして最後の最後で、こんな目に遭うとは・・・・・・愛を感じるにも限界はある。日本人全般に何か恨みでもあるのだろうか。僕が何を言っても取り合ってくれなかったので、この場は早く切り上げ、急いで搭乗口に向かうことにした。コンチネンタル航空の係員は「もう飛行機に乗るのは諦めたほうがいい。明日の便を手配するよ」と言ったが、一縷の望みを持って、ひたすら走った。

不幸中の幸いで搭乗口は出国審査のすぐそばにあった。係りの人は僕を静止することなく、とにかく走れと言い僕はその言葉に従ってゲートまで行った。飛行機の扉は当然のごとく閉じられていたが、CAがトランシーバーで連絡を取り、扉を開けてくれた。

ブラジルではいつも手遅れになりそうなところで、救われる。 なぜか彼らは、緊急なときには柔軟な対応し、非常に迅速に対応してくれる。

奇跡的に飛行機は無事僕を乗せて離陸し、僕も安堵のため息をつくことができた。 これで飛行機に乗り遅れていたらひどく惨めな夜を過ごすことになり、二度とブラジルに来たいと思わなくなっていただろう。そういった意味でも、幸運だった。

今回の旅はついているのかついていないのか、よく分からない旅だったが、思い出だけはたくさん持ち帰ることが出来た。だが、次はハワイかニューカレドニアあたりでゆっくりバカンスを楽しむのも悪くはないと本気で思っている。