Keep My Word

旅とタンゴをこよなく愛する。カラダナオル創業者。

フルムーンパーティー

フルムーンパーティーまでの道のりは長かった。
バンコクで四時間待ってサムイ島へのフライトに乗り継ぐ予定が、さらに理由もそれに対する説明もなく待ち時間が延長され、結局六時間半ほど待たされてしまった。

旅の相棒のヨシロウは「ありえない」を連発し、いたく不機嫌だったが、アジアの旅は順風満帆にいくはずがないと最初から思っていた僕は仕方がないと諦めていた。

[caption id="attachment_443" align="aligncenter" width="337" caption="(飯を食ったら上機嫌になるヨシロウくんです)"]Yoshirou[/caption]

サムイ島の空港に到着したのは、結局夜の11時をまわった頃だった。
空港にはHISから派遣された現地旅行会社の女の子が来ており、僕たちをホテルまで送ってくれた。 彼女たちも空港でずっと待っていたらしい。

そんな状況だったのだが、「今日わたし釣り行きました。三匹釣れました。でもとても小さい」と彼女は上機嫌に話をした。 「それでそれは食べたの?」と聞くと、「まだです」と答えたので「やっぱり食べるのか」と妙に納得した。
タイ人は陽気な人が多く、こちらも気分もそれにつられて、ついつい陽気に話をしてしまう。

空港からホテルまでは車で10分くらいだったので、すぐに着いた。
一人旅の自由旅行に慣れていたので、空港まで迎えが来ているというのは、とても新鮮だ。

その日は近所のコンビニに行ってビールを買って、ビーチのそばに置かれているホテルのテーブルで飲んだ。波の音を聴きながら飲むビールは最高にうまい。

翌日、起きるとすでに10時近くだった。
思った以上に涼しいサムイ島では、寝苦しい夜とは無縁だった。
てっきりまだ寝ていると思ったヨシロウはすでに外出してしまったらしい。
走りにでも行ってしまったのだろうか?

朝食を済まし、フロントへ行ってフルムーンパーティーが開催されるバンガン島への船の予約をする。 六時から開催されるらしいが、あんまり早く行ってもどうかと思ったので、八時半発の船を予約した。 八時にホテルにピックアップしに来てくれるとのことだった。

今日はそれまで特に予定はなかったので、バイクを借りて島を一周することにした。 ホテルに一番近くのバイク屋に行ったが、もう借りられるバイクはないとのことだった。 すぐ先にもう一軒あるとのことだったので、昨日行ったファミリーマートまで行ってみると、その目の前に バイク屋があった。いくらか訊いてみると、「280バーツ」と言う。 あらかじめホテルのフロントの女の子に相場は250バーツだと聞いていたので、 「それじゃあ、高い」というとあっさり「じゃあ、君だけ特別に250バーツにしてあげるよ」と言われた。

無免許、ノーヘルだったが、フルスロットルで島を一周した。
「ウォー」と訳を分からないことを叫びながら、風を切って走るのは気持ちが良かった。 交通量が多いところはなるべく避け、人がいない辺鄙なところを走った。
バイクを運転するのはカンボジアに行って以来だったが、運転に支障はない。
途中、スパやレストランに寄りながらだったので、結局ホテルに帰ったのは夕方だった。

Thai, Ko Pha Ngan

ホテルに帰ると、ヨシロウもおりフルムーンパーティーのことを伝え、その前に一緒に食事を取ることにした。 きちんと20時には食事を取ってホテルに帰ると、まだ迎えのバスは来ていない。
タイではよくあることだ。
ようやく僕たちがバスに乗ったのは、9時半を過ぎた頃だった。
そして、船着場でも2時間ほど待たされ、バンガン島へ着いたのは、0時すこし前だった。

Thai, Ko Pha Ngan

とりあえずビーチを目指そうと思い、人の流れる方向へ歩いていく。
途中、悪名高い「バケツカクテル」を購入し、ビーチへと歩く。このカクテルは非常に飲みやすいのだが、 あとからかなり効いてくることが後ほど判明した。もちろん、判明したころにはすでに手遅れになっていたのだが・・・・。

トランス系の音楽が流れているところへと僕たちは、とことこと歩いて移動した。
ヨシロウは壇上へ上がりたいと言い出し、それに付いて壇上へ上がってみる。
上から見る風景はかなり壮観だった。

Thai, Ko Pha Ngan

その頃には、バケツカクテルを立て続けに飲み、すっかり酔ってしまい、気が付くとヨシロウもおらず、 一人ふらふらとビーチをさまよっていた。どういうきっかけか覚えがないが、たまたま日本人二人組みの女の子と知り合い、色々と話をした。明け方になって違うビーチへと見学に行こうということになり、それに付いていく。

Thai, Ko Pha Ngan

そのあとパーティーのあるビーチに戻ると男連れ四人組に声をかけられ「それはおれのビーチサンダルだ。 おれはそれをスペインで買った。だから返せ!」といきなり言われた。返す言葉もない。ドラッグが決まっていることは間違いないが、そうだとしても周りの友達の一人くらいは、止めても良さそうだ。しかし、馬鹿面下げてみんな揃いも揃って同じことをのたまう。 あほらしくなり、とっとと走って逃げ出した。
(ちなみに履いていたビーチサンダルはこれです。かわいいでしょ?)

一度振り切ったと思って腰掛けて休んでいると、またやってきて同じことを言う。
そろそろ潮時だと思い、サムイ島へと帰ることにした。

彼らは正気に返ったとき、こんなばかばかしい出来事で赤の他人を巻き込んで、不快な気持ちをさせたことを思い出すのだろうか?

Thai, Ko Pha Ngan

(どういう経緯でこの写真を撮ったか覚えがないですが、気のいい人たちであることは間違いないです)

サムイ島への船はものすごい混雑で、それにしびれを切らして順番抜かしをするやつが続出し、大混乱だった。
それでもなんとか船へと乗り込み、無事ホテルへと帰った。

Thai

最後は不完全燃焼な幕切れだったが、それはそれで楽しい思い出だ。
今後の人生においてブラジルくんだりまで行って買ったお気に入りのサンダルを、赤の他人が自分ものだと断言し、 しつこくつきまとわれることはまずないだろう。それしても、ドラッグは怖い。なるべく近寄らないほうが賢明だろう。

フルムーンパーティーは噂に聞くほど危険ではないが、万全を期するためにはバンガン島に泊まってホテルで休みながら、参加したほうが賢明のようだ。ずっと飲み続けて、踊り続けて参加すると途中で疲れてダウンしてしまう。
(それで、相棒のヨシロウは財布を盗られました)

日本の花見と同じで、満月なんてそっちのけでみんな楽しそうだったパーティーだった。