Keep My Word

旅とタンゴをこよなく愛する。カラダナオル創業者。

イングロリアス・バスターズ

タランティーノ監督は映画大好きである。
心底、映画好きである。
それはよく伝わってくる映画だが、完成度は非常に低い。

ただおそらく「パルプ・フィクション」や「レザボア・ドックス」のクオリティをもう彼に期待しても駄目なのだろう。演出家としては素晴らしいのだが、ワンシーン、ワンシーンが過去の映画のオマージュのような作り方をしまう映画バカな彼には、パルプ・フィクションンを作り上げたときのように共同脚本家が必要なのかもしれない。
(ようは彼の映画には彼以外の違う要素が必要なのだ。全編タランティーノ尽くしはもう限界だ)

きっとこのシーンを撮りたいから、この人はこの場所で殺されたんだろうなと伝わってしまう画作りだ。映画の一番の重要な要素は、ストーリーなのだが、タランティーノ尽くしの画ばかりが際立ってしまい、肝心のストーリーが中身のないものになってしまっているのが非常に残念だ。

パルプ・フィクション」や「レザボア・ドックス」で見せたような深さは、共同脚本を書いたロジャー・エイヴァリーが持ち込んだ要素で、タランティーノは本当は中身のないただの映画バカなのではと勘ぐってしまう映画だった。

コミュケーション能力の高い彼は演出家としてはとても優秀なので、いっそのこと他人が書いた脚本を彼が映画化すれば、素晴らしい作品が再び見れるのかもしれない。

ブラッド・ピットを始めるとする俳優陣は素晴らしい出来だし、特にクリストフ・ヴァルツは本当に嫌な奴を熱演しており、彼が出て来るたびに映画がとても引き締まった。カンヌで男優賞を取ったのもうなずける。

カンヌで賞を取る映画だから、A級映画だと思うと、がっかりしてしまうので、タランティーノのことも忘れて、出来のいいB級映画を見に行く心づもりで見に行けばそれなりに楽しめる映画なのかしれない。

見終わった後は何も残らないので、ビール片手にポップコーンでも食べながら、気軽な気持ちで見れば、それほどのストレスを感じないだろう。間違ってもしらふで見てはいけない。ただ気分が悪くなる、そんな映画だ。