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旅とタンゴをこよなく愛する。カラダナオル創業者。

異端の資本主義論への考察〜デジタル世代に向けて

ここ2、3日アゴラで読んだ異端の資本主義論というエントリーが頭にこびりついて離れない。残念なことにエントリーとしてかなり長く、分かりにくいところが多々あるので、作者自身の言葉と多少言葉を付け加えて、作者の主張を要約してみた。

歴史で紐解く資本主義論:

1. 「資本主義の構造的な問題点は金利である」

例)時給1,000円で年間3,000時間働くと年収は300万円ですが、西暦元年から2008年間のこの労働者の合計賃金は約60億円になります。

そのお金を5%で運用した「資本家」の預金額との差は、実に55,851,940,948,311,800,000,000,000,000,000,000倍であり、これは労働者と資本家の所得の差でもありま す。資本主義が強烈な格差を生み出すのは、政治学、経済学以前の問題として、このような、利子のメカニズムに付随する構造的な問題と考えるのが自然ではないでしょうか。

2. 20世紀以降の資本主義社会をリードしてきたアメリカが最も経済力を持ち、最も豊かだった1950年・60年代は、アメリカが最も社会主義化していた時期です。(個人所得税最高税率は90%などの政策)

3. 一方、社会主義国家は「社会の諸悪の根源である資本家」を排除するために民間資本を取り上げ、私有財産を認めない、という基本政策を取ります。

だからといって、社会から資本が消えてなくなることはなく、結局誰かが資本を「所有」しなければなりません。20世紀の社会主義体制の最大の矛盾であり欠陥は、民間の資本家から資本を取り上げ、国家という世界最大の資本家を生み出してしまったことではないでしょうか。

結論:1950年・60年代において、アメリカや日本などの「資本主義」国家は、本質的に平等な社会主義的社会であり、同じくソ連などの「社会主義」国家は、本質的に最も格差の激しい資本主義的社会であったため、資本主義的な「社会主義」国家(ソ連)が、より社会主義的だった「資本主義」国家(アメリカ、日本な どの西側諸国)より先に崩壊した、というのが私の仮説です。

世界最大の資本主義国家であるアメリカの現在の状況:

1. 現在アメリカの失業率は10%を超えて上昇中ですが、1年間以上職を探している人は統計から除外されるため、実質的には17%を超えているという推定もあります。

2. アメリカで最後に残ったセーフティーネット、食糧配給券の受給者が過去最高、全国民の12%に達し、更に1日2万人のペースで増え続けています。

3. ハーバード大学が2005年に実施した全米1,700強の破産事例の調査によれば、破産の約半数は医療問題に起因しており、破産者の75%は医療保険に加 入していたといいます。医療費が支払えずに破産した人々の多くは大卒で、マイホームを持ち、責任ある仕事についていた中流層でした。

4. 米国の刑務所では、入所と同時に手数料と言った名目で多額の借金を負わされ、刑期を終えても借金漬けの状態で出所するため、貧困のために犯罪に走り、すぐに刑務所に逆戻りという循環に陥っています。その結果、アメリカの囚人人口は30年前の3倍を超え、米国の成人45人に一人が保護観察或いは執行猶予中です。(世界の囚人の25%がアメリカ人という、凄惨な社会事情になっている反面、刑務所は民営化され、もっとも儲かるビジネスのひとつとなり、施設の土地建物は 証券化されて人気金融商品になっています)

マルクスが分析した資本主義とは?

1. 資本主義社会で対立する二つの階級、資本家と労働者の違いは、生産手段を持っている者と持っていない者の違いです。

2. 資本主義社会は労働者は資本家の利益のために働き、働けば働くほど、資本家が得をするシステムであり、労働者が事実上、資本家の奴隷となるように組織されていると結論付けました。

3. 「価格が限界費用に収斂する」激しい競争の中で商品の競争力を維持するためには、どんどん価格を下げざるを得ず、利幅が縮小する中で、僅かな儲けをますます生産手段につぎ込み、更に労働者への分配率が減らされていくという、悪循環が必然的に生じます。社会に失業者が増加して社会問題が深刻化し、労働者はとても貧しくなって、最後には何も買えなくなってしまいます。
                      
結論:社会全体の購買力が低下し、商品が売れなくなり、資本家は自滅することが運命付けられているシステムだという解釈です。

そして、マルクスの考えは、このような資本主義が崩壊した後は、生産手段が全ての人々のものに、すなわち、剰余資本が全ての人々に配分される、社会階級のない共産主義社会が生まれる、というものです。

ルクスが考えた社会主義とは?

「人々はそれぞれが能力に応じて働いて、それぞれが必要に応じて支払われる。労働は資本家のためではなく、労働者自身のためのものになる」という画期的なシステム。


考察:
作者は最後に「インターネットは社会主義?」というタイトルで、限界費用が限りなくゼロに近づいた「フリー」の世界の状況を説明している。資本主義が崩壊しつつある今、ホリエモン小飼弾さんが説く、ベーシック・インカムなど社会の構造自体をドラマティックに変革するシステムの導入が必要なのかもしれない。

現在のアメリカの状況はマルクスが予言したとおりの状況になっており、日本も同じくそのような道を歩んでいくのだろう。限界費用がゼロになりつつある世の中では、組織である利点を生かすことは非常に難しいと言わざるを得ない。そのような世の中を生き抜くには個人の価値を限界まで高めて、その能力を最先端の技術を駆使して、システム化することではないだろうか。一般化できない個人的な資質は価値がない世の中になってきているのだ。
(アートの世界では一般化できない資質も多いに価値があるが、その競争はますます激しくなってくるだろう)

システム化、限界費用はゼロ、というと世の中がどんどん殺風景なものになっていくように感じるかもしれないが、実際は以前よりもよりクリエイティブになれるチャンスが広がるということではないだろうか。自分の能力を最大限に生かすチャンスは以前よりも広がり、組織に頼らずに自分一人で生きていくことを決意した人間にとっては、優位に働くことが多い。

ベーシック・インカム、あるいは富を平等に分配するシステムが確立されたと仮定した世界では、人は一体なにに希望を持ち、なにを目的に生きていくのだろうか。一部の人が予想しているようにどこまでも自堕落になり、滅亡へと進んでいくのか、あるいはリスクテイカーが増えてどんどん世の中がいい方向へと向かっていくのか。そのことに思いを馳せると、思考は止まらなくなる。