なんだかとても疲れた。
ブエノスアイレスのマンションの契約のために駆けずり回った一週間だったし、またアビマエルもブエノスアイレスに来て、ずっと一緒に回らないといけなかったので、色々な意味で大変な一週間だった。
(アビマエルは会社の研修でサンフランシスコとコロンビアに行ったことがあるくらいで、自分一人で海外に来るのは初めてだ)
モンテビデオからブエノスアイレスに向かう深夜バスに乗り込むと、僕らの席は二階の一番前の特等席だった。
深夜11時半発のバスなので、前方には夜景が広がり、窓からは綺麗な星空が覗いていた。
そして、隣には気が許せる友達がいて、ビールでいい気分になったアビマエルは酔っ払ったよく働かない頭でカメラのシャッターをひたすら切っている。
きっと、ぶれぶれでどうしようもないひどい写真だろう。
僕はブエノスアイレスに2年も住んだし、しかも今回の契約のことで右往左往させられ、ひどい目にあっている。でも、ブエノスアイレスに初めて来た彼には、この街を好きになって欲しいと思う。それはひとりよがりな気持ちかもしれないが、こんな目にあってもそのように思えるのだから、ブエノスアイレスはなかなかの街だ。
夜はすべてを覆い尽くす。
嘘も過去も未来も、すべて。
流れる車窓からの風景を見ながら、「くだらないな」と思った。きっと来年の今頃、今回の出来事なんて鼻で笑えるほど、たいしたことではないだろう。人生は常に現在進行形なのだから。
きっと自分にとって大事なのは、来年の今頃も色々と打ちのめされながらも、ビール片手にそれを笑い飛ばせる友達が横に座っていることなのだと思う。そうして、それを糧にまた新たな困難に立ち向かっていけるだろう。
昔、雑誌のカメラマンをやっていた頃、そのときの編集長は「夜景の写真は評価に値にしない。すべてが綺麗に見えるから」と言っていた。
たぶん、人生にもそれが当てはまる。
よく見ようとすると、すべてがくだらなく、味気ないものになってしまう。
どうでもいいことは自分の意志によってこっそりと覆い隠してしまい、ちょっとした光で当てられたものが美しく見えればいい。
ブエノスアイレスは美しい街だ。
今はそれだけでも十分だと思う。
(応援よろしくお願いいたします)