エミュレーツ航空を初めて利用したのは20歳の頃に、スコットランドの首都エディンバラからインドに飛んだときだった。その頃、ドバイなんて聞いたこともない都市だったので、ドバイ経由の飛行機なんて不安でしょうがなかったが、いざ乗ってみるとその当時は珍しい個人用ビデオ、それに良質な食事、エコノミーとしては広い座席と最高のエアラインだった。
今回、ブエノスアイレスにエミュレーツ航空が就航したので、日本に行ったときに久しぶりに利用してみた。ただネックはやたらと時間がかかることだ。帰りの便に到っては、合計38時間もかかった。よって、映画を10本以上観ることになった。そのなかで最も印象深かった映画が「ラブ・アゲイン」という映画だ。
「40歳の童貞男」で名を馳せたスティーブ・カレルと、個人的に若い頃からファンのジュリアン・ムーアが出ている映画だったので、何気なしに観た映画だったのだが、これが意外と面白く、最後に結構感動した。前知識なしに観たのがよかったのだと思う。
ストーリーは到ってシンプルで、「25年連れ添った妻に浮気された男の一騒動」と言ってしまえばそれまでだ。しかし、そこには様々なエモーションが絡み、また魅力的な登場人物に彩られ、最後には大団円を迎える。ただの軽いコメディと思って観ると、かなり痛い目を見る映画だ。
英語学習に役立ちそうな気の利いたセリフも散りばめられている。
こういう映画を観ると、ハリウッド映画の奥深さを感じられずにはいられない。肩肘張ることなく、さらっと良質なエンターテイメントを届ける場所は、ハリウッドを置いてほかにない。
また次点として印象深ったのは「ドライヴ」と「少年は残酷な弓を射る」だ。
「ドライブ」はミニマムな映像スタイルと、主役のライアン・ゴズリングの寡黙な演技が目を引く。「少年は残酷な弓を射る」は原題は「We Need to Talk About Kevin(ケビンについて私たちは話すべき)」というのだが、そのタイトルが本当にしっくりくる内容だ。
残酷な犯罪を犯した少年の母親が主人公という、どう転んでも後味の悪い映画になることは明らかなのだが、胸にずしりと響く重量感溢れる映画に仕上がっている。イギリスの鬼才、デレク・ジャーマンのミューズだったティルダ・スウィントンがまさかこのような役にやるような女優に成長するとは思ってもみなかった。
いつも変な服を着て、変な役をしていた彼女だったが、この難しい役どころを完璧にこなし、冒頭のトマト祭りのシーンでは彼女の表情とトマト、それに血のイメージが渾然となってとても印象的なシーンだった。このシーンを見るだけでも価値のある映画だ。
ちなみに圏外というか、論外な作品が日本映画「ワイルド7」だ。
瑛太、椎名桔平、それに中井貴一という有名どころが総出演しているが、くだらない、本当にくだらない映画だ。きっとものすごく努力して映像や照明に時間をかけているのが分かるが、それがすべて裏目に出ており、本当にどうでもいいと思ってしまう。
この映画が二流、三流の役者たちが出演しているのあれば、このクオリティでも我慢出来るかもしれないが、これだけの役者とお金をかけて、この結果というは納得出来ない。一体どこでどう間違えれば、こんなひどい作品が出来上がるのだろうか?(昔、仕事でとある会社にソフトウェアの制作を依頼したが、出来たものは最低の品質だったので文句を言ったら、担当の女性が「私たち、徹夜で努力しました!」と言って逆切れされたことを思い出した・・・・・)
最近、怒っていない人が怒りたい時に「ワイルド7」はお薦めです。観た後、本当にいらっとします。