なぜコロンビアに行ったのかと言うと、おそらく雑誌かなにかでカルタヘナの写真を見て、なんとなく行きたいと思ったからだと思う。
コロンビアというと、一般的には麻薬とやたらと治安が悪いとうイメージしかないが、今はまったくそんなことはなく、むしろ現在住んでいるブエノスアイレスよりも治安はいいという印象を持った。
カルタヘナの旧市街は世界遺産に登録されているだけあって、とてもおしゃれでいかにも南米という色使いが印象的だった。観光地だけあって、日本のリゾート地並に高かったが、それだけの価値はあると思う。特にカルタヘナ近くの島々(ロザリオ諸島)の海はとても綺麗で、いかにもカリブ海という感じだった。(しかし、カルタヘナの海は千葉の九十九里浜程度の綺麗さだったけど)
ブエノスアイレスの冬の寒さにすっかり参っていたので、常夏のカルタヘナの気候ですっかり気分を良くし、結局1週間滞在した。近くの島に行ったり、火山に行ったりと充実した日々を過ごし、また近いうちに行ってみたいと思う街だった。(ブエノスアイレスからだと往復5万円くらいで行けるので、日本だとタイリゾート程度の距離感だと思う)
ドイツの哲学者ニーチェはよく肉体が及ぼす精神への影響について言及したが、まったくそのとおりで、天気がいいと気分がいい。ひたすら天気が悪く寒い北欧でニーチェが気嫌いする悲観的な実存哲学が生まれたのも、偶然ではない気がする。海と太陽と白い浜辺で哲学者を気取るのは到底無理な相談だ。
アルゼンチン人はとかくチリ人とコロンビア人を馬鹿にする傾向があるが、両国ともアルゼンチンよりもはるかに素晴らしい経済発展を遂げ、治安もいい。(コロンビア経済に興味のある方はこちらの三菱UFJリサーチ&コンサルティング の2012年のレポートをお読みください。体感的に非常に正しいと思います)
ブエノスアイレスの次にどの国に住むのかとよく訊かれるけど、コロンビアという選択肢も悪くないかなと今では思い始めている。別にそれは経済発展どうこうという問題ではなく、クオリティ・オブ・ライフを考えると、悪くないと思えるからだ。
世界経済の中心は今後はアジアであることは間違いないが、人生において別にそれが最優先される必要もないと感じている。シンガポールやインドネシア、それにフィリピンといった国々に住みたいと思わない最大の理由が彼らの価値観が「経済発展がすべて」であることに尽きる。
そのような意味で全く違うベクトルを持っているアルゼンチンに魅力を感じるのかもしれない。
だが、コロンビアという国は経済発展を目指しながらも、それほど自分たちの人生を犠牲にしているようには見えず、なんだか楽しそうでもある。もっとこの国を知りたいと思った今回の旅だった。
きっと、だから旅することはやめられない。いつも予想を裏切り、新しい知識と知見をもたらしてくれるから。