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旅とタンゴをこよなく愛する。カラダナオル創業者。

世界で話されるスペイン語:そして英語の宿命について

スペイン語は大別すると、4つに分けられる。

まずもちろん、スペインのスペイン語、そしてカリブ海沿岸にある中南米、南米のスペイン語(コロンビア、メキシコ、グアテマラなど)、それにチリのスペイン語、それからアルゼンチンのスペイン語だ。

(もっと細かく分けることは可能だが、中南米や南米の人たちと話していると、だいたいこの分け方をしている。ペルー、ボリビアなどの各国は上記の国々と比べて存在感で劣るからだろう)

これらのなかでもこのラテンの国々において、一番評判のいいスペイン語はコロンビアのスペイン語だ。実際、コロンビアに行ったし、アルゼンチンにはたくさんのコロンビア人がいるので彼らと話した経験からすると、たしかに聞き取りやすいスペイン語を話す。

また特にコロンビアの首都ボゴタ出身の人たちのスペイン語はとてもゆっくりだし、それほど多くのスラングも使わないので、外国人にとってもコミュニケーションが取りやすい。

ここメキシコのスペイン語もとても評判がいい。コロンビアのスペイン語とほぼ変わらずクリアだし、聞き取りやすいスペイン語を話す。では、どうしてコロンビアのスペイン語ほど評価が高くないかというと、スラングを多用するし、doble sentido(ドーブレ・センティード:double meaning(両義語))がたくさんあるからだ。

メキシコ人の友人アレックスからの携帯メールは8割がたスラングで占められ、メキシコ人に訊いても時々首をかしげることもある。

そして、この大陸で最も評判が悪いのが、チリのスペイン語だ。

みなさん、こぞって「あれはスペイン語ではない!」とバカにしている。

(チリの経済成長が著しいので、そのやっかみも多少含まれているかもしれないけど。ただ歴史的にアルゼンチンとチリは特に仲が悪く、アルゼンチン人はチリ人が大嫌いだ)

自分がスペイン語を習ったアルゼンチンのスペイン語の評判もすこぶる悪い。

ただ、これはアルゼンチンのスペイン語の評判が悪いというよりは、アルゼンチン人の評判が悪い。いわく、「あいつらはおれたちと同じ南米の国なのに、自分たちの国があたかもヨーロッパの国であるかのように振る舞うイケ好かない奴ら」というのが一般的な評価だ。

アルゼンチン人からしてみれば、彼らの祖父母はたいていイタリア、スペイン、それにドイツからの移民なので、自分たちのことをヨーロッパ人と思って、何が悪いということなのだろう。その態度が、ほかの南米の国の人々からは煙たがれる原因なのだけど。

個人的にはアルゼンチンのスペイン語は気に入っている。アルゼンチン訛りのスペイン語を話すと、ここメキシコでは「笑いの種」なので、今ではすっかりメキシコ流の言い回しに変えたが、どうしても時々出てしまう。そんなときは、メキシコ人の友人に直され、矯正される・・・・アルゼンチンでは正しいという言い訳は許してもらえない。

日本では、スペインのスペイン語が「標準のスペイン語」というようなイメージがあるが、スペインはもうひとつの南米大陸と思ったほうがいいほど語彙、発音、言い回しも各地方によって違う。

日本でも独立運動が話題になるバスク地方は、言語体系が全く違うバスク語という言語を話し、これはスペイン語をはじめとするどのラテン言語、さらにゲルマン系の言語とも異なる、唯一無二の言語体系を持つ言語だ。(ほかにもバルセロナを州都するカタルーニャ州スペイン語ではなく、カタルーニャ語を話す)

このようなことを踏まえて、スペイン語を学ぶのにはどの国がいいかと言うと、一概には言えないが、カリブ海沿岸の国々がやはり一番だと思う。特にコロンビアの首都ボゴタは環境もよく、治安も改善されて住みやすい。(ついでに言うと雨がよく降るので、それがネックだ。また同じコロンビアのカタルヘナというカリブ海沿岸の街のスペイン語はわけがわからない。コロンビア人も何を言っているのか分からないことがあると言っていた。スペイン語は本当に各地方によって違うので厄介だ)

自分がもし、今からスペイン語を習うとしたらやはり圧倒的にメキシコシティだと思うが、このあたりはもう好みだ。日本人のバックパッカーに有名なグアテマラなどでスペイン語を習うという手段もあるかもしれないが、スペイン語学習という以外の側面ではあまり魅力的ではないように思える。

ちなみに自分は英語は訛りで有名なスコットランドで習い、スペイン語もこれまた訛りで有名なアルゼンチンで習ったが、あまり不自由を感じていない。悪名高いチリでスペイン語を習ったイタリア人の友人フレデリックもメキシコで特にスペイン語で苦労しているように思えない。

スペイン以外では基本的な文法は同じなので、中南米、南米の国のなかで気に入った国、その文化に親近感を感じられる国でその言語を学ぶのが一番だ。(スペインのスペイン語はvosotrosというラテン大陸では使わない主語を使うので、ひとつ苦労が増える)

日本人は英語に対して、あほみたいに「ネイティブ・・スピーカーの発音や言い回し」にこだわっているが、英語もそのうちスペイン語のように各国よって、それぞれ特色がある言語となっていくだろう。それが多くの国で話される言語の宿命だからだ。

結局は細かいことにこだわらずに、とっとと単語のひとつでも暗記したほうが、自分のためになるということだろう。