Keep My Word

旅とタンゴをこよなく愛する。カラダナオル創業者。

ノーベル賞受賞者のユヌスさんの講演

今日は2006年にノーベル平和賞を受賞したムハマド・ユネスさんの講演を聴きに行った。とても印象的だったので、ここにその内容を書いてみようと思う。(講演は通訳なしで行われ、録音したわけでもなく、自分のメモ書きから書き起こした要約です)

2008年は様々な危機が訪れた年でした。
最初に食料危機、そして金融危機とこの世界の根本を揺るがすような危機が相次いで起きました。

しかし、ここで強調したいのは危機は人々に機会をも与えることです。このことに関しては本来ならば新聞の一面、あるいはテレビ番組の1時間を毎日割いてもいいほどです。

では、その機会をどのように捉えればいいのでしょうか?

この危機は少数の人々によって引き起こされました。特にある特定の一カ国のごく少数の人々によって引き起こされたのです。何億ドル、何百億ドルのお金が失われ、世界の半分の人たちが犠牲になりました。

ここで言う世界の半分とは、下から数えたほうの半分です。彼らは世界の10%の人々による政策によって犠牲になったのです。そして、この危機のあとには、新しいシステム、作り直されデザインされ直されたシステムを打ち立てる必要があります。

この新しいシステムは、ふわふわ浮ついたものがベースになるのではなく、強固でしっかりと根っこに根ざしたシステムでなくてはいけません。

人間はお金作り(Money Making Machine)というひとつの機能をもった機械ではなく、複数の機能を持ったマルチな機械なのです。

自分たちの利益を追求や利己主義に走ることなく、新しいビジネススタイル、ソーシャルビジネスを目指す必要があります。

ソーシャルビジネスとは、利益を追求することが第一義ではなく、問題を解決することを第一義に置いている企業のことです。そういった企業には競合他社という概念はありません。同じ問題を解決することに取り組むのだから、競争するより協力していいパートーナーシップを築けばいいのです。

特にテクノロジーを活用すれば、多くの問題はもっと早く、簡単に解決することが可能です。

『ここで彼が創設したグラミン銀行の事業がいくつか紹介される。例えば、グラミン銀行インテルと提携して、グラミン・インテルとして様々な事業を展開していることや、アディダスとも契約を締結する予定であるという。もっと具体的な例は下記に掲載されている。
http://d.hatena.ne.jp/kagawa100/20090311/1236774961
(特にここに掲載されているヨーグルトのことは詳しく説明していた)

重要なことは、何も利益を度外視するのではなく、ちょっとした儲けを目指すことです。我々はなにもホームレスの人々にお金をあげているわけではなく、あくまでお金を貸して、その利子と預かっているお金でさらなる投資を行い、利益を出しているのです。

また貧困は、貧乏な人々によって作られるのではありません。貧しいことは彼らの責任ではないのです。貧困は現在のなんらかの保証がなければ融資をしない銀行のシステムや組織が生み出すのです。ただグラミン銀行は彼らにお金を貸しますが、そのお金を投資した事業に責任は持ちません。なぜならそれは彼らの責任だからです。

(ちなみにグラミン銀行は無保証人、無担保だがその返済率は98%を超えている。5人一組による互助システムなどを取り入れ、実際にお金が借りられるまでいくつかステップがあるので、借りる人は決して無責任にお金を借りることはできないし、どうしても事業に必要な小額なお金しか借りない)

ソーシャルビジネスを実現するために、私たちは国や大企業を回って説得する必要を感じてはいません。新しいシステムは、個人の責任をベースにしたシステムなのです。

あなた方がスーパーに行って食品を手に取るとき、その食品の安全性が黄信号だったらどう思いますか?赤信号の食品だったらどう思いますか?私は安全な緑信号の食品を次の世代の人々に残したいと思っています。

私たちの基本的な理念は、次世代の人々により安全、より良いものを渡していくことです。

貧困を生み出す根本的な問題は、構造の問題です。
ですので、その構造を変える必要があるのです。

しかし、勘違いしないでください。
私たちが世界を変えるのではなく、あなた方が世界を変えるのです。
私たちが世界を変えてくれるのではと、期待するのは止めてください。

現在ある会社のそのほとんどが、利益を追求する会社です。
まだこれから社会に出る若い人々に言いたいのは、そういった会社だけではなく、ソーシャルビジネスの理念を持った会社も選択できるような社会を実現して欲しいということです。

ソーシャルビジネスは誰でも簡単に始めることができます。
そして、そういった人々が世界を変えていくのです。

ご清聴ありがとうございました。