朝起きると、洗剤がなかった。
土曜の朝は、洗濯をしながら掃除をし、遅い朝食を取るのが習慣だ。
当たり前のことだが洗剤がないと、洗濯ができない。
「洗濯をしながら」というのが重要なのだ。
洗濯をしながらほかのやるべきことをやると非常に気分がいい。
それは、きっと「洗濯をしながら」やる作業だからだろう。
朝起きると、洗剤がないというようなことから生活の綻びが始まるのかもしれない。
洗剤がないという事実から目を背けるために、テーブルに置いてあった文庫本を取り上げ、読みふける。まだ読み始めたばかりだから、読み終える頃には日も暮れているだろう。
10分が限界だった。
やはりどうにもこうにも洗剤がない。
重い腰を上げて、買いに出かけることにした。
ついでにクリーニング屋に行こうと思い立ち、シャツを二枚ほど手に持つ。
そして、テレビの横に置いてあるTSUTAYAから借りたレンタルDVDが目に入る。
セールだったので100円で借りられた。
だから5本ほどまとめて借りた。明日が返す期日だ。なのに、まだ一本しか見ていない。
部屋を出ようとして、鍵を探す。
どこにも見当たらない。
そこで昨日、鍵をどこかに置き忘れたのを思い出す。
夜中の3時に帰ってきたのだが、たまたま玄関の鍵が開いていたので助かった。
いたるところに綻びはあるものだ。
クリーニング屋に向かいながら、先週のことを思い出す。
先週は熱を出し、38度の熱を抱えながら、同じようにクリーニング屋に向かっていた。
なぜ38度の頭でクリーニング屋に行ったのだろう?
そもそもの発端はコンタクトレンズの溶液が切れていたので、それを買いにマツモトキヨシに行ったのだった。
そこで10分ものあいだ、コンタクトレンズの溶液を探し回った。38度の頭ではろくなことにならない。どうして店員に聞かなかったのといえば、高熱のあまり喉がからからで、声を出す自信なかったからだ。だから、10分以上も店内を歩き回るはめに陥った。
強風の中、クリーニング屋に行き、そしてコンタクレンズの溶液を買って帰ったら、洗面台の下にはコンタクトレンズの溶液の予備があったのを発見した。
だから38度の頭ではろくなことにならないのだ。
クリーニング屋に寄り、スーパーを目指す。
そこで洗剤を探す。洗剤だけを買いに来たのに、買い物かごには、すでにみたらし団子やオレンジジュースやら特に必要ではないものがたくさん入っている。
洗剤がなかなか見つからない。
本当に必要なものは、いつも見つかりにくいものなのだ。
だから、代わりにみたらし団子やオレンジジュースなどで気分を紛らわせようとする。
結局、2000円ぐらいの買い物をして、店を出た。
高い洗剤になったものだ。
ようやく帰宅し、いつもの儀式に厳かに取り掛かる。
まずは洗濯機を回し、掃除機をかけ、食器を洗う。
洗濯をしながらする作業は格段に効率性を増す。
それは洗濯機を終える頃には、すべての作業を終えていなければという脅迫観念によるものかもしれない。
人間は、洗濯をしながらあらゆる作業を行えるものだ。
その気になれば、子供だって作れるかもしれない。
遅い朝食はいつのまにか昼食に変わってしまった。
生活にはリズムが重要だ。
まったく妙な一日になりそうだ。
今日の綻びについて考えはするが、休日なので改善する気は起きない。
明日は朝起きると、洗剤はある。
それだけでも、よしとしよう。