いきなりバリカンでカッパ頭にされて、どうなるかと思ったが、そのウデはブエノスアイレス滞在中に行っているマシンガントークのアルゼンチン人、さらにメキシコシティの美容室で働いている21歳のゲイのメキシコ人よりもはるかによかった。
ちなみに8ユーロ(約1200円)しかしなかった。 メキシコシティの美容室、それにブエノスアイレスの美容室よりも安い。
そもそもイタリアに来たのは、ここシチリア島のパレルモに来たかったからだ。 なぜ、「来たい」とそれほど強烈に思ったのは定かではないが、その思いは正しかった。
強烈な太陽に美しい建築物、それにシチリア料理は最高においしい。 ゴッドファーザーのせいですっかりマフィアのイメージが定着しているが、別に街中でドンパチやっているわけではない。いたって、平和なものだ。だが、しかしここはシエスタの国。彼らは昼間たっぷり眠った後、夜遅くまで外出することが身に染み付いている。
宿泊している家の目の前にはバーがあり、深夜1時過ぎまでどんちゃん騒ぎだ。あまりに大音量の音楽をかき鳴らすので、あたかも自分の部屋でパーティーでもしているかのような錯覚を受ける。
シチリアの夜はいつまでも経っても騒がしい。 まさしく想像していたとおりのイタリアの夜だ。
シエスタなんて経済的合理性を考えれば、全くおかしなものだ。 でも、この土地にいると、昼ごはんを食べたあとに、ゆっくりと昼寝するほうがとても合理的に思える。こんな強烈な太陽のなか、働くほうが馬鹿げているというものだ。
人生を愛するとうことは、本当はひょんなことから始まるのかもしれない。 そう、たとえばたっぷりと昼食を取った後に、ゆっくりとシエスタを取るというようなことから。
シチリアでの生活を少しのあいだ、満喫しようと思っている。